中国の深センに行ってきて、調査してきたレポートとなります。
具体的な旅に関してはこちらをご覧ください。
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目次
基本情報
まず初めに、基本情報を共有致します。
中国
面積:約960万㎢(日本の約26倍)
人口:約13.90億人
面積:約2000㎢
人口:約1250万人
事実確認
- 中国のスタートアップ企業の数は、人口の割合から見て特別多い訳ではない(※国によって統計データが異なるため、参考程度)
- 影響力のある会社は都心部に集まる傾向にあり、国土面積が広いため経済効果の差が激しい
事実確認としてスタートアップ企業の統計データを示します。
中小企業庁の「中小企業白書」によると、日本の年間の起業件数は約20万件で、そのうち会社化したものが 24%とのことなので、年間の法人起業件数は5万社と考えられます。
それに比べ中国は、「2018年中国全土起業レポート」によると、10 万社を超えるスタートアップ企業が存在します。その内 21,959社のスタートアップ企業を抱える広東地方(
深セン、広州省の所在地)が全国で 2番目にスタートアップ企業の多い地域で、北京、広東、上海の合計だけでも中国全土の65%を占める67,639件ものスタートアップ企業が集結しています。統計データから見ると
全国の1%に満たない地域に65%の企業が密集していることとなります。
网易(NetEase)系列のビックデータビジネスを担う企業NetEase Cloudの統計データによれば、2018年に北京、 広東、上海は全国の65%を超える起業家が集い、続いて浙江、四川、福建にも多くのスタートアップ企業が誕生することが判明しました。
この他、2018年に発表された
時価総額が10億ドル(1150億円)を超えるベンチャー企業「
ユニコーン企業ランキングのレポート」によれば、当時中国には
ユニコーン企業が186社存在し、
時価総額の累計が58,843億(95兆円強)、そのうち北京が83件、上海が34件、
杭州が21件、
深センが18件、南京が6件、大都市の一つである広州はたったの4件のみという統計結果となりました。
環境
事実
「VC資金力の優勢」
“中国は経済の急速な発展により、ベンチャー企業が誕生する要となる資金調達を満たす環境が整っている”
中国経済の急成⻑に伴い、
投資不動産の爆発的な値上がりや(現在の中国の大都市では中古物件でも1億円超えが基本的な相場になっており、大都市に家を持つ事のハードルが高い)、
ITが普及し始めた頃の株式投資で、後々多くの会社が上場し、
VCは時代の変化で何倍にも膨れ上がった資金で投資を継続的に行う事を可能としました。
1999年に公表された「グローバルフォーチュン500」のデータでは中国の企業はたった8社のみがランクインしていました。当時の中国で影響力を持つ企業は日本の10分の1にも及ばず、隣接する人口も土地も圧倒的な差がある韓国よりも少ない過去がありました。
ところが19年後の2018年には状況が一変し、ランクインする世界規模の企業は8社から120社まで急増、そして先進国
アメリカが184社から126社まで減少、日本も101社から52社に減少。「フォーチュングローバル500」を見ても、中国が勢力を増してきている事が分かります。
「
一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンター」の調べによると、ベンチャー企業に対する2015年の投資額は、日本が1302億円に対し、中国は2兆5084億円と、
20倍近くに上ります。以上のことから中国では資金調達の環境が整っている事が分かります。
インターネット記事引用
現在の日本では、いくら若者が起業したくても、それをバックアップしてくれるVCが日本に多く存在しません。日本のベンチャー投資が少ないのは、リスクの高いビジネスへの資金供給に及び腰な「文化」があることも大きいとされます。しかし、革新的な技術を掲げて市場へ果敢にチャレンジするベンチャーが多く現れなければ、日本経済全体を力強い成⻑軌道に乗せることはできません。中国と比べると、日本には創業意欲を持つ若者が少なく、現状に安住しがちな「草食系」が増えています。これに加え、ベンチャーキャピタル(VC)の不在という問題点も日本には存在しています。
起因
「国の政策と起業支援」
国の発展には自国の企業がもたらす経済効果が大きく関係し、中国では政府が全面的にスタートアップ企業のサポートを行うことにより、起業がしやすい環境となっています。このことに伴い、中国の国家経済の成⻑とスタートアップ企業には国の政策が大きく関連しています。
国家経済の急速な発展には国の政策が大きく関係しており、外部のインターネットサービスを遮断し、
10億人を超えるマーケットを独占。この閉鎖的な政策が後に国の発展に大きく影響を及ぼしました。中国が大きく発展したのも、
独裁国家による国の勢力を高めるのには非常に効果的な政策だと言えます。他国からは賛否両論がありますが、戦後の中国が大きく成⻑できたのも国の政策がもたらした変革だと言えます。
中国は発展途上国であるため、かつての中国マーケットには多くの突破口が存在しました。2010年以前はパソコンの時代で、各種SNS、音楽等さまざまなプラットフォームが人々のニーズであるのにも関わらず空白の状況で、ユーザーを囲むのに最適な時期でした。パソコンの時代からスマートフォンの時代へシフトするタイミングも同じで、先手必勝に近い形で多くの起業家がチャンスをものにしました。
現在中国を代表するグローバルフォーチュンにランクインする企業を見ると、中国のIT ビジネスの多くは米国や他国のビジネスモデルを基に開発が行われており、近年となってオリジナリティーのあるプロダクトも生まれるようになりました。つまり簡単に言えば海外のビジネスモデルの複製です。遮断するという政策があったからこそ、他国と肩を並べる企業が産み出されたのではないかと考えられます。
今後
「VC投資の動向」
- 中国市場の特徴としてBtoBをメインとする企業の数が全体の2%未満で、重視されていない
- スタートアップ企業の熱は、大手IT企業が大半のシェアを占めるBtoC市場からブルーオーシャンであるBtoB市場へシフト
スタートアップ事業設立と継続にはVCからの資金調達が欠かせません。2018年の市場の傾向として、これまでに重視されていなかった企業向けサービス領域で多くの新規企業が誕生しました。かつての中国は人口の多さとITサービスの未発達(世界で主流の ITサービスが提供されていない)により、まさしく「先んずれば人を制す」に等しい環境下で、BtoCビジネスのターゲットとなる一般ユーザの獲得が可能でした。しかし、現在は大手企業の全面的なサービス展開により、BtoC領域で新規企業が誕生することが難しくなりました。そこで、企業向けサービスを主軸とする中国市場ではまだまだ伸び代 のあるBtoBビジネスが注目される市場となりました。
このように、中国の市場動向は、
発展途上国としての特徴が顕著に現れています。先進国の米国ではVC投資の40%がBtoB領域に、残りの60%はBtoC領域に資金が流れていて、
時価総額 TOP10企業中6社のBtoB企業がランクインしています。対する中国のVC投資の95%以上がBtoC領域に偏り、残りの僅か5%だけがBtoB領域へと流れました。両者を比較すると中国のVC投資は非常に傾きが激しいといえます。
なぜ中国には多くの上場企業が存在するのにも関わらず、企業に対するサービスを軸とするBtoBがこれ程までに少ないのか
理由として考えられるのはVCがBtoB市場よりもBtoC市場を重視していることが原因と考えられます。BtoBビジネスは企業からすれば⻑期的なマラソンであり、主な役割として他の企業の情報処理やマネジメントの効率化がメインで、徐々に「制度の設立」をしながらも収穫をとるのが特徴です。発展途上中の中国の得意分野であり、強みでもある激戦区のIT領域では、結果が短期間でハッキリと数字として現れるかが継続的に融資を獲得する非常に重要な要素で、BtoCビジネスによって成し遂げる爆発的な成⻑に資金を提供していました。しかし、近年は状況が一転し、BtoC市場の成熟により顧客の数と市場のサービスの未発達でチャンスが溢れていた中国市場は爆発的な成⻑期から安定期に移りつつあります。そこで現在の中国ではBtoC領域の伸び代の限度を見据えた多くの企業がBtoB市場進出へと、新たな方向性へと転換をし始めています。
中国でBtoB市場が注目されている訳
現在、中国のBtoC市場には既に中国IT業界リーディングカンパニーであるBAT(Baidu、Alibaba、Tencent)や近年急成⻑を遂げる
ユニコーン企業である、コンテンツマーケティングが強みのBytedance、配車サービスのDiDi等が多くのBtoCのマーケットシェアを抱えており、スタートアップのBtoC企業はある程度成熟をした際にどの大手企業から買収をされるのかを考えることが必要になります。しかしながら、BtoBビジネスはTencentやAlibabaにとって最大の金山でもあります。BtoBビジネスの人口規模は
アメリカの5倍以上であるにも関わらず、中国全体のBtoB企業に対する融資額は2%にも満たないことから、あまりにも軽視されている事が捉えられます。
以上の観点から市場の傾向から企業向けサービスのBtoB市場が今後注目され始めることが予想できます。
パブリックイメージ
「大手企業の経営者は社会的に認知度が高く、ポジティブな思想家が多く、夢と希望を与える存在であるため、人々から親しみやすい」
中国IT企業の経営者はメディアなどで取り上げられる事が多く、サービスを利用した事のある国⺠の殆どに認知されています。中でも露出の機会が多く、存在感の際立つのがAlibaba創業者のジャック・マー氏です。彼は英語堪能で過去に教師を務めていた経験からプレゼンテーションスキルが非常に高く、彼の幼少期の失敗から億万⻑者になるまでのストーリーは非常に勇気付けられるものがあり、凡人が莫大な資産(個人資産額3兆円弱)を手にするまでの成功談が若者やIT従業者に夢と希望を与えています。このように中国では成⻑スピードが早く、人々が常に触れるITサービスの経営者は富と名誉の象徴として国⺠に認識されています。
国民性
「就職制度、生活コストの低さなどの様々な要因から国⺠が失敗に寛容である」
様々な要因から中国では日本と比べると失敗に対する認識の差が存在します。
就職面では
発展途上国の中国は、企業の安定感より成⻑スピード重視を重視しており、特に大企業には社内評価システムが
実力主義なケースが多く、年齢やキャリアはあまり重視されていません。また、終身雇用制度が存在しないため、転職が頻繁に行われます。転職すればするほど人材価値が高まる傾向にあるため、離職や起業で失敗をしても社会的にデメリットとして捉えられる事がないため、
心理的負担がありません。
生活コストの面では、必要最低限の生活費(衣食住)の確保が日本と比べて低コストであり、国⺠が全体的に楽観的かつ幸福度が高いため、失敗に対する態度が根本的に違います。
以上の観点から中国国⺠は失敗に対するプレッシャー が低いと考えられます。
まとめ
中国の急激な発展の背景には、決して裕福ではない状況から人口という資産と、インターネットという爆発的なスピードで時代の最先端をゆく産業への投資、そして政府の戦略的な政策がありました。不利な状況をいかに打破し、組織を大きくするのか。これは資本主義の現代社会では免れることのない国(組織)としてミッションであり、結果的にみて国を成⻑させる事を可能とした中国政府は国の成⻑に大きく貢献し、真のリーダーとしての勤めを果たしてい るといえるのではないでしょうか。
参考文献
謝辞
今回このレポートを書くにあたり、協力していただいたTencentの岩瀬さん(Kota Iwase | Facebook)、本当にありがとうございました。
さいごに
正確なデータを信頼できると思われる情報ソースから入手した情報・データに基づき作成していますが、正確性、信頼性等の全てを保証するものではありません。
個人的な見解もあります。ご指摘ありましたらよろしくお願いいたします。
さいごまでご覧いただきありがとうございます!