『日本酒学』第10回 ー新潟大学ー
新潟大学で開講されている『日本酒学』の第10回です。
第9回の記事はこちらをご覧ください。
今回のテーマは
『アルコールと脳』
講師の方は、新潟大学脳研究所の准教授である武井延之さんです。
目次
「酔っ払う」のはどうして?
作用点は確実に脳にあるけど、メカニズムは理解されてないそうです。
人類は大昔(一説には紀元前から?)からお酒を飲んでいます。
そもそもお酒は、最古の向精神薬であり、最も作用の穏やかな向精神薬です。
情報を伝えたり、回路を作っている神経細胞をニューロンと呼び、シナプス伝達をします。(細胞の中を電気信号が流れる)
神経伝達には神経伝達物質によって興奮性と抑制性があります。
- プラス(興奮)の入力が優位 → 情報を伝達
- マイナス(抑制)の入力が優位 → 情報の伝達なし
GABA
中枢神経系で最も主要な抑制性神経伝達物質
抑制を伝える伝達物質で、アルコールを感知すると抑制されます。
抑制性を抑制するため、抑制がなくなるということです。(笑気状態)
グルタミン酸
脳内で最も主要な興奮性神経伝達物質
受容体機能がアルコールによって抑制されます。
飲み過ぎると神経の作用がシャットダウン → 記憶なくなる。気絶
こういう流れで酔っ払います。🍶
酔いの段階
爽快期
血中濃度0.02~0.04%(ビール中瓶1本、日本酒1合程度)
気分爽やか。陽気で活発な態度。
大脳新皮質が少し麻痺してきます。
ほろ酔期
血中濃度0.05~0.1%(ビール中瓶1〜2本、日本酒1〜2合程度)
ほろ酔い。身振りが大きくなる。抑制が低下する。体温脈拍上昇。
大脳新皮質が麻痺してきます。
初期酩酊期
血中濃度0.11~0.15%(ビール中瓶3本、日本酒3合程度)
気が大きくなり、大声で話したりします。勘定の起伏が激しくなり、立てばふらつく。
大脳新皮質が麻痺してきます。
酩酊期
血中濃度0.16~0.3%(ビール中瓶4〜6本、日本酒4〜6合程度)
千鳥足になる。同じことを何度も話したり、吐き気をもよおしたりします。
大脳辺縁系や小脳までにも作用が及び、麻痺してきます。
泥酔期
血中濃度0.31~0.4%(ビール中瓶7〜10本、日本酒7合〜1升程度)
海馬が麻痺するため、短期記憶がなくなります。
昏睡期
血中濃度0.41%以上(ビール中瓶10本以上、)
急性アルコール中毒状態。揺り動かしても起きない。返事をしない、失禁。
脳幹までもが麻痺してしまいます。
救急車を呼ぶかどうかの判断なのですが、「返事がないときは救急車を呼ぶ」これを覚えておくといいかもしれません。
体重の1/13が血液量なので、体重から血液量を計算し、飲んだ分で血中濃度を大体測れます。
これも、目安としてなんとなーく分かる程度で、飲むペースや体調などによって結構変わってきます。
すごい。このページで血中濃度測れます。笑
上の計算せずに飲み会中に使ってみると現状が分かっていいかも。
お酒の怖いところは、作用が穏やかなのに、効き始めからたった4倍ぐらいの血中濃度の差で致死量になるところです。
ほどほどに嗜むのが重要です。
こちらに、イラスト付きでわかりやすくまとまっているので参考にしてください!
なぜお酒(アルコール)を飲みたくなるのか?
「脳が飲みたがる」
脳には報酬系(ドーパミン神経回路)という神経回路があります。
アルコールはドーパミン報酬系を刺激するため、「アルコール = 報酬」という記憶が甦らされ、飲みたくなります。
アルコール依存症とは?
依存性薬物の特徴
- 食事や水等の「報酬」と異なり、満足しない
- 記憶が消去されにくい。つまり、報酬がこなくなってもあきらめずに求め続ける。
- アルコールは依存性の向精神薬物
- アルコール(エタノール)を求めているので、味とかどうでもよくなる
蒸留酒を日常的に飲んでいると危ないそうです。日本酒大量に飲んでいてもそこまでなりにくいです。そして、アルコールの薬理効果(寝れないから飲むとか、忘れたいから飲むとか)を期待した飲み方は危ないです。
「お酒は味、場の雰囲気を楽しむもの」
中核的な症状
中核的な症状のほか健康問題、社会問題を引き起こす。
アル中に関しては、この漫画面白いらしいです。
お酒に強い/弱いとは?
アルコールの代謝、分解が影響しています。
アルコール脱水素酵素(ADH)でアセトアルデヒドに肝臓で分解されます。
その後、アルデヒド脱水素酵素(ALDH)で酢酸に分解されます。
その後、炭酸ガス、水となり、このときに熱エネルギーが放出されます。
これがアルコールの分解の様子です。
人間にとって、このアセトアルデヒドが毒です。
このページわかりやすい!
上記の分解酵素とは別に、ミクロソームエタノール酸化系という分解酵素があります。
アルコールの慢性摂取によって発現誘導されます。
これが、「飲めば強くなる」と言われている要因ですね。本当にあったんだ。知らなかった。
しかしながら、ラジカルを生成するため、より毒性が強いのです。
分解できる分体内に毒を増やすという。
この2種類の酵素のSNP(スニップ)の違いによって強いとか弱いとかが出てきます。
ADH1B(His47Arg)は、100倍ほど酵素活性に差があるそうです。日本人はアルコールを早く分解する人が多いです。(90%以上)
活性が高いほど「酔っ払わない」のです。
ALDH2(Glu487Ls)にもよります。
日本人の半分ぐらいがこっちの活性が少ないです。だから毒を体内に貯めちゃうので、顔が赤くなったりして、二日酔いになったりします。
活性が高いほど気分が悪くなりにくく、二日酔いになりにくいのです。
データから、東北南九州にお酒が強い人が多というのはやっぱりあるそうです。しかし、日本人は進化として、お酒に弱くなるように進化しているそうです。
稲作のおかげで日本酒が近くなったから、あえて弱いようにしていったと予想されています。酒飲んじゃうと働けなくなっちゃうからね。笑
脳や健康への影響
お酒はなんだかんだ言って毒です。お酒というよりアルデヒドが毒なのです。どんなに少なくても毒なので、脳が未発達の時には特に細胞に影響が出てしまいます。だからこそ、飲酒は20を超えてからなのですね。
また、長期間大量に飲酒していると、脳が萎縮してしまいます。
逆に。お酒が良いという説もあります。よくJカーブと呼ばれるやつですね。ちょっと飲んだ方が死亡率下がったり、ガンになりにくいとか言われたりしますよね。
少量を毎日飲むと言っても、1日缶ビール1缶とかの少量の話です。
また、お酒は生物学的には毒でも社会的には良いかもしれません。
というのも、コミュニケーションが取りやすくなったり、「ちょっと飲んだ方が英語上手くなる」といった思いを持つ人は多いですしね。
特にシャイな日本人は軽くお酒飲んだ方がいっぱい喋れるのではないでしょうか?(笑)
抑制外れているのが原因であるとは思いますが、爽快期に限ったことです。飲み過ぎ注意!⚠️
飲酒の十特(「百家説林」柳沢淇園)
- 礼を正し
- 労をいとい
- 憂を忘れ
- 鬱をひらき
- 気をめぐらし
- 病を避け
- 毒を消し
- 人と親しみ
- 縁を結ぶ
- 人寿を延ぶ
さいごに
お酒は程々に、楽しく飲む事が一番いいですね。(当たり前)
「お酒は飲んでも飲まれるな!」
これ肝に命じておきます。
これからも楽しく飲んでいきます💪
第11回の記事はこちらです!